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【開催報告】日本補綴歯科学会 第132回学術大会

 2023年5月19日(金)~21日(日)、日本補綴歯科学会(以下JPS)の第132回学術大会がハイブリッド開催(パシフィコ横浜+ライブ配信)された。この歴史ある学術大会に我々日本臨床歯科学会(以下SJCD)は前回大会より共催学会となり、昨年行われた調印式(JPSとSJCDがこれから全面的に協力し、共に歯科界のために協力する学術交流協定)の趣旨、『我々SJCDとJPSは日本の歯科発展のため”臨床と研究の融合”という志を一つにし、共に全面的に協力し合う』(写真1)という号令のもと、JPSの補綴歯科臨床、研究、教育に携わる歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士とともに多くのSJCD会員が登壇した。

参加登録者(現地参加+web参加)2831名と盛況であった。

 以下、プログラムを抜粋する。

会員意見交換会(懇親会)

19()18:00~会員意見交換会が横浜ロイヤルパークホテルにて、着座+立席にて開催された。JPS馬場一美理事長(大会委員長)は、『補綴学会は今後も多方面でchallengeをしていく』のもとに、JPSSJCDとのコラボレーション、日本老年精神医学会との共同研究、そして、補綴歯科専門医制度機構認定最終段階に辿り着いたとの報告をした。大会長として、JPS,SJCD両執行部、また参加した多くの会員の皆さんへの感謝と敬意を表した。そしてSJCD山﨑理事長の挨拶と乾杯に繋がり、今年もSJCDJPSの良好な関係性が窺えた。

JPS次期理事長講演

「補綴歯科専門医として社会と繋がる-補綴の価値のさらなる創出に向けて-」

 座長:馬場一美 JPS理事長  講師:窪木拓男 JPS副理事長

20236月に開催される総会及び新理事による理事会を経て、岡山大学学術研究院医歯薬学域インプラント再生補綴学分野の窪木拓男教授が第40代理事長に就任される。そこで第132回学術大会基調講演に、座長をJPS馬場一美現理事長、講演をJPS窪木拓男次期理事長が登壇した。演題は「補綴歯科専門医として社会と繋がる補綴の価値のさらなる創出に向けて」。国民とのつながりを強化して補綴の価値を高めたい、そしてJPS会員とともに不易流行の精神(いつまでも変わらない本質的なものを大事にしつつ、新しい変化も取り入れるの意)で前進していきたいと熱く語った。写真 窪木 次期理事長講演

臨床エクストリームセッション

「オクルーザルベニアは有用な補綴装置となりうるのか」

座長:新谷明一(日歯大)、山本恒一(SJCD) 

講師:大河雅之(SJCD)、山本尚吾(SJCD)

天然歯への低侵襲な治療の期待が高まっている昨今、前歯ではラミネートベニアが広く使用されている。そして臼歯部においてもオクルーザルベニアに注目が集まっている。

臼歯ベニアのプレパレーションデザインについては、1)残存歯質量とベニア被覆歯面、2)接着のクオリティー、3)バイオメカニックス、4)トゥースフレクシャーコントロール、5)接着界面の保守、6)マテリアルセレクションなどの観点から、様々の文献検索を交え、臼歯部ベニアの推奨されるプレパレーションデザインの考察について語られた。そして、本セッションではオクルーザルベニアの文献的な考察から実際の臨床での注意点までについて、歯科医師、歯科技工士の両サイドらの視点を交えての多角的な話となった。

写真 大河会長、山本尚吾先生

Focus On

「補綴歯科コラボレーション!」

座長:樋口大輔(松歯大)、陸誠(西関東) 

講師:西山英史,高橋健(SJCD)、兒玉直紀(岡山大),新町愛子(関西支部)

   服部麻里子,山谷雄一(医歯大)、浅井宏行,黒松慎司(関西支部)

   田中晋平,古舘美弥(昭和大)、内山徹哉,間中道郎(SJCD)

このセッションでは、補綴歯科学会において初めての試み、補綴歯科コラボレーションと題したコンペティションが開催された。今回は選出された6組が歯科医師と歯科技工士としてのそれぞれの立場から診査診断から治療計画、治療方法を症例を通して講演した。SJCDからは西山先生、高橋先生が「審美修復治療を成功に導くコミュニケーションと実際」について、歯科医師と歯科技工士が審美観、歯科学的哲学、学術的認識を互いに認識することの重要性を語り、患者との「治療ゴールの共有」の大切さをデジタル技術を取り入れた症例を通して報告した。治療戦略の中で近年技工操作におけるデジタルの助けは大きく、「治療ゴールの共有」に有用であると理解できる内容であった。また内山先生、間中先生が「審美修復治療を成功に導くコミュニケーションと実際」について、咬合崩壊患者における顎顔面を指標とした咬合再構成治療ステップを説明し、咬合高径の決定は頭を悩ませるが、これをセファロレントゲン写真などから読み取り、機能的にも審美的にも配慮した症例を報告した。咬合高径決定方法の一つとして、大変参考になる内容であった。

(ポスター発表)

 ポスター会場には、「有床義歯:19題」・「クラウンブリッジ:37題」・「インプラント:7題」・「ニューロサイエンス:4題」「バイオロジー:25題」・「口腔機能:16題」・「教育:4題」・「症例:20題」・「学会主導研究:1題」のポスター全133題が集まり、ポスター討論も行われた。

 また、企業展示はポスター会場内にあり、常に人の流れと活気があった。 

ハンズオンセミナー6

デジタルデンティストリーにおけるバーチャルWax Upの実践

講師:植松厚夫、貞光謙一郎、吉田茂治、富施博介 (SJCD)

 JPSのハンズオンコースにSJCDの講師陣が登壇。植松先生、貞光先生が講義を、吉田先生と富施先生が実習を計3時間枠で貰い受け、昨年同様JPSからの期待の程が窺えた。そして有料開催にも関わらず、多くの受講生が講義・実習に参加した。

 講義パートでは、デジタルデータ特有の「劣化しない」「コピーや伝送が容易」「再現性が高い」というメリットを最大限活用したワークフローを構築することで、歯科医師と歯科技工士の連携、作業効率化、ひいては我が国の歯科医療喫緊の課題である歯科技工士数減少に歯止めをかける一助となると期待していると語った。また、実習パートでは、吉田先生、富施先生を中心に東京SJCD、大阪SJCDメンバーがインストラクターとして補助し、受講生の手伝いを行った。受講生は「スキャナーにて模型取込」を、「PCにて設計・デザイン」を行い、デジタルワークフローに触れた。本セッションは、カボデンタルシステムズジャパン合同会社の協力を受け実施された。

臨床リレーセッション3

現代補綴の到達点:支台歯形成から補綴装置装着までのステップ

座長:土屋賢司(SJCD)、鮎川保則(九州大)

講師:千葉豊和、瀬戸延泰、伊藤雄策 (SJCD)

臨床リレーセッションは補綴学会学術大会において、専門医研修単位認定対象セッションにもなる、教育的で重要なプログラムである。その1つをSJCDが鮎川先生とともに担当した。

土屋先生は「歯冠補綴治療は、治療ステップのどこかで『手抜き』が発生しても、一見してきちんと治療したように見え、患者には善し悪しがわかりにくい。患者に対して真摯で信頼される補綴治療を実践するためには、最新知識のアップデートと全ての治療ステップを適切に行うスキルや態度が必要である」と語った。

講師はそれを受け、千葉先生は「補綴治療におけるワークフローの変遷」をアナログ的手法とデジタル的手法を比較、融合し、技工士との連携方法を交えながら、ワークフローについて解説した。瀬戸先生は「現代補綴における支台歯形成の臨床的意義と役割」を支台歯形成の重要性、原理原則や新しい概念『トップダウンプレパレーション』について解説した。伊藤先生は「プロビジョナルレストレーションの役割と臨床応用」を精密で意味を持たせたプロビジョナルを経ることで、初めて適切な最終修復物が装着できることを解説した。

あとがき

この記事が読まれる頃には、JPSは窪木拓男理事長を中心とした新体制となっている。窪木先生は昨年11月に広島で行われた合同例会に参加され、懇親会で「SJCDJPSの連携は、今後歯科界に及ばす、国民に寄与することだと」と挨拶し、JPSSJCDの臨床力をSJCDJPSの研究力を相互補完することで、その影響力が計り知れないものになること、連携が実現したことへの喜びを笑顔で熱く語っていた。今後もSJCDJPSが相思相愛で良好な関係を続けるためにも会員皆さんの日本補綴歯科学会学術大会への参加協力を切に切にお願いする。次回、補綴歯科学会133回学術大会は202475()7()、千葉県幕張メッセ国際会議場で行われる。JPSに馴染みのないSJCD会員皆さんにとって、今回の記事で少しでもJPSを身近に感じる報告となれば幸いである

文責:日本臨床歯科学会東京支部広報委員会

       高島浩二 荻原太郎 植原亮 .山口宜伸

 


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