【開催報告】〈共催〉日本補綴歯科学会第133回学術大会
2024年7月5日(金)~7日(日)、日本補綴歯科学会(以下JPS)の第133回学術大会がハイブリッド開催(幕張メッセ国際会議場+WEB配信)された。学術大会のテーマは「補綴の未来、歯科の未来「不易流行(変わらないもの、変えていくもの)」。補綴歯科がデジタル技術を社会に浸透させて人々の生活に新たな進歩につながる独創的なイノベーション、変革を続けるであろうDXの波に乗るには、「補綴」本来の矜持を有しながら守るべき価値観や経験を大事にしてこそ可能となるのでは、と大会長の河相安彦先生(日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座)は述べている。
また、第133回学術大会において、The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodonticsが共催され、アジア各国から多数の参加者が集った。
JPSの補綴歯科臨床、研究、教育に携わる歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士とともに多くのSJCD会員が登壇した。
参加登録者数(現地参加+web参加)は、2850名と盛況であった。
本学術大会では第131回学術大会において連携協定を締結した日本臨床歯科学会に続き、一般社団法人日本栄養治療学会との連携協定を結ぶメインシンポジウムが行われた。
以下、プログラムを抜粋する。
会員意見交換会(懇親会)
5日(金)18:00~会員意見交換会がホテルニューオータニ幕張にて、着座+立食にて開催された。
JPS窪木拓男理事長(岡山大学インプラント再生補綴)は今大会のテーマ『不易流行(ふえきりゅうこう)』を日本補綴歯科学会の立ち位置に置き換えて話し、国民や医療人、関連企業という利害関係に支持され続けるためには、不易(変えてはならない、変えなくてもよい)という部分と流行(変えなくてはならない、とどまってはいけない)という部分を区別し、施策にはその両方の要素を戦略的に含む必要があると語った。”不易”には臨床教育の重要性を話し、有料ハンズオンセミナーを今年も日本臨床歯科学会の先生方に協力いただいたことへの感謝を述べた。
ハンズオンセミナー4
修復治療を成功に導くマイクロスコープの有用性
講師:山﨑 長郎、土屋 賢司、大河 雅之 (日本臨床歯科学会)
JPSのハンズオンコースに山﨑先生、土屋先生、大河先生の3名が講師として登壇された。山崎先生が270°ベニア形成を土屋先生がクラウン形成をデモストレーションを交えて講義された。その後、大河先生が実際に実習で行う180°ベニアの形成手順も含めて講義された。
支台歯形成は、咬合と並んで補綴治療の根幹を成すもので非常に重要であり、過去から現在にわたり修復マテリアルの進歩、発展とともに修正されてきた。今回の講義やハンズオンでは、支台歯形成を今一度見直し、マイクロスコープ下における精密な形成を体験することができた。
実習を計3時間枠で貰い受け、昨年同様JPSからの期待の程が窺えた。そして有料開催にも関わらず、多くの受講生が講義・実習に参加した。
本セッションは、松風(株)、ペントロンジャパン(株)、クインテッセンス出版(株) の協力を受け実施された。
シンポジウム3
セラミック修復最前線
座長:正木 千尋(九歯大)、三浦 賞子(明海大)
講師:日高 豊彦(西関東支部、SJCD)
大谷 一紀(東京支部)
佐藤 洋平 ( 歯科佐藤 横浜鶴見)
本シンポジウムではセラミック修復に関して経験豊富な3名の先生から、最新の治療術式を紹介していただきながら、材料選択や症例選択のポイントに加え、形成や接着操作の注意点などについて議論された。日高豊彦先生からは過去から現在までの歯冠修復に関する治療の変遷を踏まえた修復材料の選択基準について講演された。大谷一紀先生からはシングルリテーナーブリッジを含めた接着ブリッジの可能性や術式の注意点について述べられた。さらに佐藤洋平先生からはラミネートベニアやオクルーザルベニアなどの低侵襲なベニア修復について講演された。本セッションでは、今後ますます必要となるセラミック修復に関する知識の向上につながり,明日からの臨床に役立つ内容であった。
臨床コンペティション
歯科医師と歯科技工士の連携による審美補綴への挑戦
座長:大久保 力廣(鶴見大)、松香 芳三(徳島大)
演者:
・積田 光由、河村 昇 ( 鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座)
・堺 貴彦1、川端 誠一2 (1. 大阪大学大学院歯学研究科クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座、2. 関西支部)
・寺尾 陽一、森 圭右、大川 友成 (東海支部)
・平澤 正洋、平島 真悟 (東京支部、SJCD)
・高岡 亮太1、森田 誠2 (1. 大阪大学大学院歯学研究科クラウンブリッジ補綴学・顎口腔機能学講座、2. 関西支部)
・佐藤 洋平1,2、伊原 啓祐3 (1. 西関東支部、2. 鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座、3. 西関東支部)
補綴歯科診療において、歯科医師と歯科技工士の連携が必須であることは、よく知られていることである。歯科医師からの依頼により、歯科技工士は補綴装置を製作するが、歯科技工伝票だけでは伝わらないことも多い。両者が綿密で丁寧なディスカッションを繰り返すことにより、補綴装置の完成度は格段に向上することになる。
昨年の補綴歯科学会学術大会にて「 Focus On補綴歯科コラボレーション!」という症例報告コンペティションが非常に好評であり、今年も歯科医師と歯科技工士のコラボレーションによる症例報告コンペティションを開催した。その連携の重要性、ポイント、どのようなディスカッションを行なっているのか発表していた。
日本補綴歯科学会、東京SJCD所属の平澤 正洋先生は歯科技工士の平島 真悟先生と「デジタルと矯正を併用した審美補綴修復治療 」という演題で発表された。審美的な要望を抱える患者に対し、診査診断から実際の治療の流れ、そして歯科医師と歯科技工士の密な連携による審美的改善したケースを発表された。
(ポスター発表、企業展示)
ポスター会場には、「有床義歯:33題」・「クラウンブリッジ:35題」・「インプラント:9題」・「ニューロサイエンス:7題」「バイオロジー・マテリアル:12題」・「口腔機能:22題」・「教育:11題」・「症例:23題」・「学会主導研究:1題」のポスター全152題海外参加ポスター31題が集まり、ポスター討論も行われた。
また、企業展示はポスター会場内にあり、常に人の流れと活気があった。
–あとがき–
補綴歯科学会学術大会は、ハンズオンセミナーや臨床コンペティション、臨床スキルアップセミナー、一般口演、ポスター発表など、多数のプログラムを用意している。最新の研究成果や技術を積極的に共有しており、とても魅力的な学会である。次回の補綴歯科学会134回学術大会は、長崎県出島メッセで行われる。これを機会にSJCD会員の皆さんも、少し足を伸ばして参加してはいかがでしょうか。