【開催報告】 2024年度 日本臨床歯科学会 東京支部 第1回例会 2024年6月2日
〜〜開催報告〜〜
2024年度日本臨床歯科学会東京支部の第一回例会は、令和6年6月2日(日)に前回から新会場となった赤坂インターシティコンファレンス the AIR にて開催され、200名程の会員が参加した。テーマを『即時治療とインプラント補綴の最前線』とし、チェアマンを日本臨床歯科学会理事である小濱忠一先生が務めた。
東京支部理事の山﨑治先生による司会、東京支部会長の大河雅之先生の挨拶のもと始まった。教育講演には小濱忠一先生が講演を行い、一般講演では町田真吾先生、遠藤元気先生、中村茂人先生が講演され、白熱したディスカッションが行われた。
教育講演
「即時治療の優位性ーその治療概念と戦略」
小濱歯科医院 日本臨床歯科学会理事 小濱忠一先生
インプラント治療の歴史において、その機能性や審美性などの治療のゴールは今も昔も普遍であるが、治療概念と戦略は時代の進歩にともない変化し続けているとし、数々の基礎研究や臨床データ、そして小濱先生の数々の長期症例の中でその変遷を話された。特に一回法の抜歯即時埋入は、感染部位とギャップへの対応が必要となるが、本来の硬組織と軟組織を有効活用できるため造成範囲や造成の難易度、また手術回数だけでなく術後のトラブルの可能性が低くなるとし、待時埋入と比較した優位性を話された。またインプラントのポジション、埋入深度、歯肉の高さと厚み、補綴形態とインプラント周囲組織の生物学的要件、補綴様式、さらにはインプラントの表面性状、表面処理、そして最新のアバットメントの有効性など多岐に渡り、現在のインプラント治療の最前線について話された。
一般講演1
「硬・軟組織増大術により顎堤の再建を行い審美・機能を回復した症例」
荻窪ツイン歯科医院 町田真吾先生
左上のインプラントがズキズキして痛いという主訴。口腔内はノンクラスプデンチャーとインプラントで補綴されていたが、インプラント周囲炎と不適合なデンチャーにより、臼歯の咬合支持が不足している状態であった。診断用ワックスアップにより、歯冠形態、骨・歯肉の造成部位を計画し、大掛かりな骨造成とsoft tissue managementを行い、審美と機能を回復した。また前歯のプロビジョナルレストレーションでLabial Half Ponticテクニックなど繊細な調整により、患者の審美的な希望を叶えた。非常に高度でレベルの高い治療であった。
一般講演2
「インプラントを用いた咬合再構成 ~サージカルガイドの優位性~」
遠藤歯科医院 遠藤元気先生
患者さんは治療途中の仮歯が取れてしまったことを主訴に来院された。歯牙ポジションが悪い歯を前医は削って治療をしていたものの、咬合平面の乱れも大きく欠損もある。軟組織やセファロ、模型診査よりインサイザルエッジポジションを求め、Wax upを行い、インプラントと補綴治療による咬合再構成の症例を発表された。
インプラント埋入の計画にはWax upをスキャンし口腔内とCT画像をマッチングさせ正確な埋入ポジションを設計し、外科手術を行なっていた。その際に、ガイドを使用することのメリットとガイドだからこその危険性を丁寧に伝えていたことが印象的であった。歯牙のポジションによる補綴設計を苦慮されたと話されていたが、最終補綴の仕上がりは素晴らしかった。
一般講演3
「欠損を伴った下顎偏位症例に対するフルマウスリハビリテーション」
デンタルクリニックアレーズ銀座 中村茂人先生
多数歯にわたる補綴修復と欠損している患者さんは下顎位も変化していることが多い。筋肉のデプログラミングにより、患者の再現性のある中心位を探り、セファロ分析と模型分析により下顎偏位など問題点を収集し、咬合再構成を行なっていた。インプラントは厳しい条件のもと埋入を行い、バーティカルストップの回復を行っていた。プロビジョナルレストレーションの調整を何度も行なっていたが、顎位のわずかな変化で患者の顎が痛いという訴えに対して、再度プロビジョナルレストレーションを全て作りかえ、慎重に調整を行ない、患者の満足を得て、補綴修復物を装着した。
集合写真
2023年度アワード発表
最後に、2023年度のアワードが発表され、平林賞に山口宜伸先生が、SJCDアワードに武川泰久先生が選出された。
閉会のご挨拶
副会長西山英史先生から現在のSNSなど情報発信のしやすさにより、間違った知識・情報が歯科界にまわる可能性に対して心配していること、我々日本臨床歯科学会が正しい情報を発信しなければならないことについて、本会の活躍を期待していると話し、盛会の中、閉会となった。
例会終了後、懇親会が開催された。新しい懇親会場RUBY JACK`S Steakhouse &Barにて200名程の参加者を迎え、抽選会など大盛況であった。フィジカルで行う意義を感じた。
文責:広報委員(滝沢卓也、望月力、杉山達也、高島浩二)