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【開催報告】日本臨床歯科学会 東京支部 第1回ステップアップミーティング

2025年7⽉21⽇(祝)、御茶ノ⽔ソラシティカンファレンスセンターにて開催された⽇本臨床⻭科学会東京⽀部主催「第1回ステップアップミーティング」において、西山英史⽀部⻑より開会の挨拶を行った。

ご自身の初めての発表経験を振り返りながら、発表が学びや成長、先輩医師とのつながりを生む貴重な機会であると述べられた。また、本会は「優れた症例を披露する場」ではなく、「日常臨床を共有し、共に学ぶ場」であるとし、若手医師の積極的な参加を呼びかけた。最後に、「晴れた祝日に集まったこの機会を有意義な一日にしましょう」と締めくくった。

 

<教育講演>

「いまある機材をチェアサイドで最大限活かす:シークエンシャル トリートメント プランへのデジタルデータ活用」

「吉田茂治先生(パークサイドデンタルオフィス)日本臨床歯科学会東京支部副支部長」

 吉田先生は、歯科界がアナログからデジタルへ移行してきている現状を踏まえ、どのようにデジタルデンティストリーを日常臨床に取り入れていくべきかを講演された。まずMentimeterを用いた会場アンケートを行い、来場者の属性や現状を把握した上で講演は開始された。その後、臨床のワークフローに沿って、IOS, CBCT, Facescan, CAD software など各機器の特徴を説明した上で、実際にどのように臨床に応用しているかを解説された。今回の講演で紹介されたFacescanのアプリは、費用も安い上にiPhoneで撮影することができ、利便性が高く、操作も簡便であるため、受講生の多くがその場でアプリをインストールしていた。また従来の2D写真と3D-Facescanの使い分けにも言及され、その有用性が示された。CAD softwareではオープンソフトウェアである、Blue Sky PlanとMedit Linkに重点を置いて解説され、前歯部審美障害の症例を通してデジタルツールを最大限に活用する方法が提示された。SJCDが提唱するシークエンシャル トリートメント プランに則った上で、最新デジタルツールが効果的に活用されているため、すぐにデジタルを臨床に落とし込むイメージができる内容であった。今回は講演時間の関係もあり前歯部のモックアップ作成までの内容であったが、2025年11月30日の第2回例会では、今話題の3Dプリンターを用いたデジタルデンティストリーについて講演されるとの告知がなされ、会場は大いに盛り上がった。

<共催セミナー>

「イオン発生機『Air Future』の活用と可能性」

「小野智恵美 様 株式会社World‐CleanAir」

本セミナーでは、放出式イオン技術を用いた空気清浄機「Air Future」について紹介された。フィルター式とは異なり、空気中のウイルス・菌・花粉・臭気などを分解・不活化する仕組みで、手術室や製薬工場にも応用されている技術を小型化した製品である。

歯科医院での導入事例としては、アレルギー症状の軽減、3Dプリンターの臭気対策、浮遊菌への補完的感染対策などが挙げられた。吸引式清浄機との併用も有効であり、簡単なメンテナンスで高い効果が期待できる点が好評を得ている。

質疑応答ではユーザーからの肯定的な声も紹介され、広い診療空間や個室対応モデルについても案内された。今後の感染対策や快適な診療環境づくりにおいて、本製品の活用が期待される。

<一般講演>

「AngleⅡ級患者に対し、アンテリアガイダンスの付与に苦慮した一症例」

「鈴木克典先生 すずの木歯科クリニック」

 初診時ブリッジの脱離を主訴として来院された患者に対してしっかりした診査行った上で下顎後退位であることやアンテリアガイダンスがないことで現在の状態となっていることを説明をされた。患者に対しては矯正治療やなるべく天然歯を補綴しないように考えられた上でのコンサルテーションを行い、患者の同意を得た。

 初期治療として根管治療を施し、再評価を行った上で矯正治療に入った。動的治療後には再評価を咬合器、頭部X線規格写真にて行った上でどうしても動かしきれなかった部位は補綴治療にて改善を図るところを示された。

 前歯部のブリッジにはファイナルが入り、臼歯部は今後ファイナルに入るところまでのプレゼンテーションとなった。

 そして、質疑応答では、何をもってディボンドされたのかというところや患者がどうしても天然歯を切削されたくないという箇所が最終的な補綴治療に響いてきたところ、矯正治療における矯正医とのディスカッションをどうされたのかというところにフォーカスを置かれ進められた。

ディスカッションは若手の先生を中心に質問が多くなされ活発なものとなった。

<一般講演>

「Esthetic treatment strategies of implants and orthodontic treatment」

「平田肇先生 平田歯科医院」

 平田先生は北海道SJCD所属であり、北海道から本ミーティングへの参加は約20年ぶりとなった。偶然にも、今回の登壇は、平田先生の師匠である山岡義孝先生以来のことであり、山岡先生も応援に駆けつけ、場を大いに盛り上げた。

 北海道に加え、大阪や名古屋など、遠方からも平田先生の友人・関係者が多数訪れ、会場は終始温かく和やかな雰囲気に包まれた。

 提示された症例は、空隙歯列と臼歯部の欠損を伴う咬合不全に対し、インプラントと矯正治療を用いて機能的・審美的な回復を図ったケース。議論の中心は、補綴主導で治療を進めるか、あるいは本症例のように矯正的アプローチを含めて対応すべきかという治療戦略の選択に置かれた。

 会全体は、適度な緊張感の中にも終始一貫した温かさがあり、非常に密度の高い臨床ディスカッションとなった。

閉会に際し、川手良祐委員長より参加者・発表者・共催企業への感謝が述べられたうえで、本ミーティングが明日からの臨床への意欲を高める機会となったことが語られた。

先生は2012年の初参加当時を振り返り、近年ではフルマウス症例が減少し、小規模やプロビジョナル段階の症例にも学びの価値があると指摘。今後は治療の過程を共有しやすい場づくりを進めていく意向を示された。

また、若手医師の発表支援としてSNSでの相談窓口や、レギュラーコース修了者向けの学びの場「Focus meeting」の活用を呼びかけ、「この場から全国へ臨床の力を発信していきたい」と締めくくられた。

賛助会員(14社)

クラレノリタケデンタル株式会社

株式会社フォレストワン

ソルベンタム合同会社

科研製薬株式会社

株式会社 松風

Ivoclar Vivadent株式会社

株式会社モリタ

カボプランメカジャパン株式会社

株式会社ヨシダ

株式会社アルタデント

ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社

株式会社ジーシー

株式会社World-Clean Air

株式会社SCOグループ

平素より賛助のご協力ありがとうございます。

出席者:107名

⽂責:遠藤元気 堀切雅⽂ 荻原太郎 小林豊明 ⾼島浩⼆


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