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【開催報告】2023 年度 テクニシャンミーティング

日本臨床歯科学会  東京支部 2023年度 

テクニシャンミーティング

日本臨床歯科学会東京支部、2023年度テクニシャンミーテングが12月10日(日)10:00よりZOOMウェビナーを用いたオンラインにて開催された。祖父江先生の司会進行のもと、担当理事の瀬戸延泰先生により開催の挨拶より始まった。

今回は、前半は、“Airway” 、後半は、 ”Digital と咬合” と2部構成で行われた。

“Airway”は片平治人先生 、土屋 覚先生 の教育講演、その後に葭澤秀一郎先生を交えた3名で総合ディスカッションが行われた。そして”Digital と咬合” では川内大輔先生と片野 潤先生に今後の Digital Dentistry の展望をご講演いただいた。

教育講演1

「クリニックにおける睡眠時無呼吸症への取り組み 」

 医療法人社団康治会 片平歯科クリニック 

 片平 治人 先生   座長 土屋 覚 先生

片平歯科クリニックは 2001年から約20年、元日本歯科大学新潟病院睡眠歯科センターの河野正己先生(現日本歯科大学名誉教授)を指導医として睡眠歯科外来を開設し、複数の睡眠医療施設と提携して閉塞性睡眠時無呼吸(以下 OSA)の治療を行っている。演者の片平先生はOSAの先駆け的存在である。

OSAの病態、原因、検査、治療法について、普段なかなか接する機会がない方にも動画も交えて分かりやすく講演していただいた。その後、我々がOSAの治療に対して第一選択としている口腔内装置(以下 OA)について、種類や製作方法、使用上注意すべき点について教示いただいた。また、OSA患者に対してMFTが有用な治療法であることを実際の臨床報告を通じて講演された。最後に片平先生は、OAはあくまでも対処療法で長期間の使用で咬合の変化が生じることにジレンマを感じられていた。これまでは、OAによる全身疾患を予防することが主流だったが、これからはOSAの発症を予防する小児期からの口腔育成へのパラダイムシフトが重要であると述べられた。

 睡眠歯科の注目度はその重要性から年々高まっているように感じられる。これからも、この分野に注目していきたい。

教育講演2

 「Airway Dentistry Vol,2 」

 DENTCRAFT studio 

 土屋 覚 先生 座長 葭澤秀一郎先生

 Airway Dentistryイントロダクションとして、呼吸と歯科、そして歯科と呼吸をテーマにテクニシャンミーティングで発表してから4年経過した。今回は、そのことを振り返りつつ、最新のトピックを交えてアップデートされた内容をご講演いただいた。

 土屋覚先生が、Airway Dentistryを学ばれたのは約10年ほど前になる。カルフォルニア州ニューポートビーチで開業されている技工士の谷口忠範先生、SPEAReducationのAirwayコース、オハイオ州のJames E,Metz先生方から学ばれた。それらの経験を通して、OSAの病態、口腔内、ブラキシズムとの関係について説明していただいた。その後は、土屋先生がMetz先生のクリニックで学ばれたMetz appliance(下顎前方牽引装置)の特徴、製作方法についてご講演された。

 最後に舌房の確保の重要性について語り、歯科医師、技工士の補綴による舌房の阻害は将来的なOSAの引き金になりないと警鐘を鳴らされた。

 OSAについて海外はどのような取り組みをしているのかも知ることができ、常に最新の情報をアップデートすることの重要性を感じる内容であった。

– ディスカッション –

 片平先生、土屋先生、葭澤先生に加え、片平先生のOAの製作を行なっているオザワオーラルクリエイトスタジオの三浦正伸先生のオンライン参加しノブレストラティブデンタルオフィス勤務の堀切雅文先生の司会のもとディスカッションが行われた。

 OSA患者の特徴として、ブラキサーが頻繁に発現する。OAは、その過酷な状況下のため壊れることが度々ある。その際に簡便に新製するため、OA製作のデジタル化についてディスカションを行った。その他、保険適応されているOA製作についての勘所や現状についてもディスカションされた。

教育講演3

 「Digital Dentistry の限界と可能性 」

 株式会社 Roots 川内 大輔 先生  

 近年におけるDX化はめざましく、各分野でのDX化が進んでいる。

その中で、独自の臨床経験からDX化を進める上で一定のトラブルにどう対処してきたのかを述べられた。

 アナログでの印象からバイト、技工作業へと進み補綴物の不適合、過度なバイトのズレが起こる事があっても、長年の経験によってその原因や解決方法もある程度分かるものの、光学スキャンから最終補綴物を製作する時、一定のトラブルが起こった場合、機械によるエラーなのか操作ミスなのか、もしくは機械の限界なのかまだまだ理解の出来ないことが多く感じられる。

 やはり今後も、デジタルであってもアナログであっても同様に歯科医師と歯科技工士がコミュニケーションをしっかりととっていくが非常に大事な役割を果たしていると感じた。

教育講演4

 「近未来におけるデジタル技術の発展とシステムの選択基準 

 MDSC TOKYO&OSAKA 所長  片野 潤 先生

 昨今の歯科治療においては、数多のCAD/CAMシステムを症例や環境によって使い分けなければならない。デジタル化が進む歯科において今後重要になるのCAD/CAMに加えてCAEの存在である。CAE(Computer Aided Engineering)とは、機器の知識に富み、操ることができる技工士のことである。技工サイドでは近い将来においてフェイシャルデータ、顎運動システム、IOSデータ、CBCTデータを使って作業することが望まれる。しかし、一つのソフト上で全てを表示できるシステムは未だ出ていない。またクリニックのデジタル化を進めているIOSにも臨床に合わせた機種選びが重要であり、このような新しい技術を駆使できる存在こそがCAEとなる。

 また、今では一般的となったCADシステムについては、制作する技工物別にシステムごとの使用感を評価されており、今後CADの導入を検討しているラボにとって非常に有益な情報だったのではないだろうか。

 CAMシステムについてはミリングと3Dプリント、それぞれの種類や特徴、利点欠点、マシンを上手く扱うコツをデータを交えながら紹介して頂いた。

 日々進化する3Dプリンターに対してどう扱えば精度の良い物が出来上がるのか、実験や実証を重ねられており、臨床家にとっては早速マネしてみようと思わされる内容だった。株式会社モリタの研究機関で働かれている片野先生ならではの情報満載で、今後もどのような情報を発信していただけるのか楽しみである。

– ディスカッション –

 Smile Exchangeの高橋健先生の司会にて、デジタルデータ上でのバイトの誤差の原因について様々な可能性を活発に議論された。肝要なことは、小さいケースを確実にこなし、大きいケースに取り掛かること。アナログで積み重ねた経験がデジタルでも活かせると述べられた。全顎的なフルデジタルのケースでは、まだ困難なことが多く、現時点ではアナログとの併用が望ましくドクターテクニシャン間の綿密な打ち合わせが欠かせないと話された。

臨床に直結する内容が多く、デジタルへの興味と知識が深まる内容であった

 116人参加の大盛況な会となった2023年度のテクニシャンミーティングは担当理事の河田裕夫先生の挨拶にて閉会となった。

 歯科医師、歯科技工士にとってAirway,Digital,咬合は今後も切っても切り離せないものであり、全顎的な治療においてAirwayを考慮した補綴形態について考えていかなければいけない。また、製作において密に連携をとることで、エラーを減らすことができることを再び実感する会であった。今後も技術が進歩していく中、更なる知識を身につけ、新しい技術を習得していく必要があると認識した。

 勉強したことをただ実践するだけでなく、チームで知識を共有し、みんなで一丸となって取り組むという考え方は、日本臨床歯科学会(SJCD)の在り方にも通じるものがあると感じた。

文責:日本臨床歯科学会東京支部広報委員会

   堀切雅文 植原亮 山口宜伸    


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