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【開催報告】2024年12月1日 日本臨床歯科学会 東京支部 第2回例会

2024年度 日本臨床歯科学会東京支部 第2回例会 開催報告

日時 2024121

場所 赤坂インターシティコンファレンス the AIR 4F

形式 現地開催

参加人数 171

2024年度日本臨床歯科学会東京支部の第2回例会は、令和6年121日(日)に赤坂インターシティコンファレンス the AIR にて開催され、多くの会員が参加した。テーマを『矯正治療』とし、チェアマンを日本臨床歯科学会東京支部顧問である前多啓博先生が務めた。

東京支部理事の上野博司先生による司会、東京支部会長の大河雅之先生の挨拶のもと始まった。まず前多啓博先生による例会の趣旨説明と日本臨床歯科学会の矯正治療に大きく影響を与えた与五沢文夫先生の話に触れ、矯正治療の歴史について話された。教育講演には山﨑長郎先生、尾島賢治先生、宇津照久先生が講演され、特別講演(ビデオレクチャー)としてWON MOON先生が講演された。最新のアライナー矯正から従来のワイヤー矯正と幅広い内容で白熱したディスカッションが行われた。

-教育講演1【コラボ講演】-

    「Interdisciplinary Management of Ortho-Restorative Patient

山﨑長郎 先生 

 

The Essential Elements of Dental Aesthetics」の要件として、「Tooth position(歯の位置)」「Tissue level(歯肉のレベル)」「Arrangement(歯列の配置)」「Contour(輪郭)」「Color(色調)」の5つが挙げられました。その中でも特に重要とされる「歯の位置」について、まずは矯正治療で適切に整えることの重要性が強調されました。

 

講演では、矯正治療の効果や長期的な予後、さらには補綴治療との連携について具体的な解説が行われました。特に、矯正治療においては歯科医師が全体の指揮をとる必要性が述べられ、矯正を取り入れた補綴治療のケースを長期的な予後とともに提示していただきました。

 

さらに、アライナー矯正と補綴治療を組み合わせたケースや、最小限の侵襲で患者のコンプレックスを改善し、最高の笑顔を引き出す治療法についても紹介され、その内容は非常に示唆に富むものでした。これらの講演を通じて、矯正治療と補綴治療の連携による審美治療の可能性と重要性を改めて学ぶことができ、大変貴重な時間となりました。

「アライナー型矯正治療における可能性と限界」

尾島賢治 先生

2024年に多数の海外講演を行ってきた尾島先生が、その経験をもとに「時代の変化」をテーマにご講演されました。講演では、デジタルプランニング、インハウスアライナー、ダイレクトプリンティングといった最新技術や、MSE(ミニスクリュー拡大装置)、ベネフィットシステム、外科矯正といった治療手法に関する多くの症例を通じて、技術と治療の進化について詳しくご紹介いただきました。

特に、アライナー矯正における最前線の取り組みを通じて、テクノロジーの進化とそれがもたらす治療潮流の変化には驚かされる内容でした。時代の変化とともに進化する矯正治療の可能性を実感すると同時に、これからの治療への期待が高まる有意義な講演となりました。

特別講演『ビデオ講演』

DR.Won Moon (アジュ大学医学部歯科矯正学教授)

The New Age of Orthodontics Using AI and Digital Technologies:

Overcoming the Limitations, and Charting the Unknown Territories with MSE,

New Generation of Aligner Systems and Novel Lingual Appliances

 

上顎の歯列が狭い患者さんに対して、上顎歯列を拡大するMSEの手技と有効性について話された。MSEは間違った術式で行うと効果がでず、失敗に至る可能性がある。そこで現在のデジタル技術を活用して、スクリューの位置や角度をシュミレーションして正確な術式で行うことが大切であると話された。

-教育講演2-

    「現代歯科医療における矯正歯科臨床の進化」

宇津照久 先生 

Dr.Angle、Dr.Case、Dr.Tweedから始まったWire -Bracketを用いた現代矯正歯科臨床を、一般的に補綴・修復治療のために歯列不正・上顎前突・下顎前突・上下顎前突・開咬・過蓋咬合などを矯正治療で治すという発想がない時代から、Interdisciplinary Treatment の中で行ってきた宇津先生の最先端の臨床を講演していただいた。矯正治療とは健康に裏付けられたエステティックに美しい顔と口元および美しい歯並びを作り出す医療とし、治療の最終的な顔貌、特に側貌を健康的に美しくし、いかにして患者の主訴である歯並びを含めたコンプレックスからの解放を達成するか、という矯正治療のゴールを多くの症例を通して提示していただいた。                                           

また『人間の顔はどこまで変えられるか』というパートでは、日常矯正臨床の中で、顎顔面外科矯正治療として顎変形症に代表される骨格性偏位を口腔外科や形成外科との連携によってダイナミックかつ緻密に顔の骨格ごと大幅に変化させる矯正歯科症例を提示されていた。『舌側矯正ブラケットを用いた顎関節症例への対応』については、顎関節症を持った不正咬合症例については、外科的処置の後 Lingual Bracket を用いて舌側矯正により咬合および顔を大幅に改善するなど多くの症例をご提示いただいた。          

全ての症例において術前・術中・術後の経過写真が驚くべき精度でSuperimposeされており、日々の診査診断の精度や診療に対する思いが感じ取れるものであった。

 適切な診断がなされず非抜歯により矯正された患者の術後の顔貌の変化、歯根のボーンハウジングからの逸脱などの問題、逆に不適切な診断により抜歯されてしまった症例などを提示していただいた上で診査診断の重要性を述べられた。

 そして、自身の Digital Orthodontics にも触れたうえで、現在Alignerなどのデジタル技術の発展より従来より矯正治療への敷居が低くなってしまっている現状を踏まえて、矯正治療は他分野と比べて治療法に方程式がありそれに則って治療すれば誰が行っても同じように治るという大きな誤解が蔓延していると警鐘を鳴らされていた。Wire-BracketにしてもAlignerにしても治療法や治療結果のレベルは各矯正医のセンスと工夫、そして誠実さによって大きく異なると述べられていた。

-総合ディスカッション-

 講演の後に座長の前多先生の司会のもと、現地で講演された山﨑先生、宇津先生、尾島先生による総合ディスカッションが行われた。Interdisciplinary Treatmentにおける矯正のゴールは矯正医、補綴医の間でどう決定していくかという議題に対して、症例によって補綴範囲の大きさによって補綴医が指揮を取るか矯正医が指揮を取るか変わってくるとし、各担当医が互いにリスペクトをし共通のゴールを目指していく必要があると話された。また抜歯・非抜歯選択基準、術前術後のボーンハウジングのシミュ レーションについて、またその制約の中でインサイザルエッジポジションの設定方法について会場からの質問を踏まえて議論された。またビデオ講演されたDr.Won MoonMSEMaxillary Skeletal Expander)についても議論され、拡大範囲の診断基準や対をなす下顎の拡大限界の診断についても議論された。

―閉会のご挨拶―

副会長西山英史先生から本日の内容を振り返り、矯正治療の大切さと簡単に手を出せるアライナー矯正についてしっかりした知識をもたなければいけないと話され、盛会の中閉会となった。

協賛:

クラレノリタケデンタル株式会社

株式会社フォレスト・ワン

ソルベンタム合同会社(3M

相田化学工業株式会社

デンツプライシロナ株式会社

ストローマン・ジャパン株式会社

株式会社メディカルネット

コアフロント株式会社

ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社

株式会社GENOVA

カボプランメカジャパン株式会社

株式会社モリタ

Ivoclar Vivadent株式会社

株式会社松風

株式会社ProtectONE

科研製薬株式会社

株式会社ジーシー

ケンテック株式会社

株式会社デンタリード

株式会社SCOグループ

クインテッセンス出版株式会社

 

平素より賛助のご協力ありがとうございます。

文責:望月力、杉山達也、町田真吾、滝沢卓也、高島浩二


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