【開催報告】2025年6月1日 日本臨床歯科学会 東京支部 2025年度 第一回例会・懇親会

去る2025年6月1日(日)、東京支部第1回例会が開催された。本例会は、大河前支部長から新たに支部長を引き継いだ西山英史先生による初めての例会であり、教育講演・一般講演には著名な先生方をお招きし、充実したプログラムとなった。
日髙先生をプログラムチェアマンに迎え、長期症例の検証をテーマとした内容で実施。また、新たな試みとして共催セミナー(ランチョンセミナー)を開催し、参加者から高い評価を得ることができた。当日は250名を超える参加申し込みがあり、会場は満員御礼の盛況となった。
司会進行は長谷川先生が務め、冒頭では西山新支部長より今後の東京支部の展望について力強い開会の挨拶が述べられた。

【一般講演】
大河原純也先生(ありす歯科医院)
「顕微鏡歯科の進化と新たな可能性 -Tele-Microdentistry-」
大河原純也先生は、遠隔診療の先駆的症例を紹介しながら、顕微鏡歯科の新たな可能性を提示された。4年前に実施したブラックトライアングル改善症例を出発点とし、根面被覆の適応診断において歯間部の距離や骨の状態の評価が極めて重要であると説明。外科・矯正・補綴のアプローチを組み合わせた複合的治療計画の重要性を述べ、天然歯とインプラントの双方におけるリカバリーケースにおいても同様の診査診断が必要であると強調された。特に補綴物の形態設計において、歯間乳頭をサポートするような設計が審美性の獲得に寄与する点が印象的であった。

【教育講演】
鈴木真名先生(鈴木歯科医院)
「結合組織移植―長期経過からの考察―」
鈴木真名先生は、20年以上の長期経過症例を基に、結合組織移植の有効性を解説された。マイクロスコープの使用による術式精度と予後への寄与、リッジオーギュメンテーションや乳頭再建、ipac technic、歯肉を歯冠側に固定するボンディング法など多彩な症例が提示された。Masanaの分類を基にした治療戦略や、インプラント周囲における軟組織管理の難しさも取り上げられ、厚み・高さのバランス、角化粘膜や骨の環境整備の重要性が強調された。特に上皮の基底層の除去が治癒形態に大きく関わる点は印象的であり、根面被覆術の適応と成功の鍵を改めて示す内容であった。

【共催セミナー】(協賛企業:クラレノリタケデンタル株式会社)
高垣智博先生(大串歯科医院)
「ジルコニア接着の勘所」
ここ数年における歯冠修復材料としてジルコニアの使用頻度が増加している一方で、臨床における脱離などの重要な問題が顕在化してきている状況である。本セミナーにおいて、高垣先生は実証データと科学的根拠に基づき、従来のガラスセラミックスに適用されてきた接着方法では、ジルコニアの接着が十分に得られないことについて詳細な解説を行われた。その上で、ジルコニアに対する適切な接着方法とその有効性について、具体的な臨床例を交えながら説明がなされた。
会場には多数の歯科医師が参加しており、ジルコニアの接着に関する関心の高さが伺えた。参加者たちは昼食時間であるにもかかわらず、高垣先生の講演内容に深く聞き入っており、その真摯な姿勢が印象的であった。
このたび初めての試みとして開催された共催セミナーは、予想を上回る参加者数と充実した内容により、極めて有意義な形で終了することができた。本セミナーの成功を踏まえ、今後も同様の形式でのセミナー開催を検討していく予定である。


【一般講演】
高橋健先生(株式会社 Smile Exchange)
「Prothetic Collaboration-SICDで歩んだ28年–」
日高歯科クリニック勤務からスタートし、SJCDと共に歩んできた28年間で多くを学びながら精度の高い歯科技工を行ってきた。過去にSJCD合同例会で発表した7人の先生の補綴を担当し、治療当時の先生とのコラボレーションの仕方や工夫、そして予後について話されていた。前歯インプラントのケース、顎位や咬合平面が乱れているケース、ベニアのケースなど多種多様な症例で各々難しい症例ばかりであった。長期予後のため、成功に導くためのコミュニケーションの大切さを痛感する講演であった。

【教育講演】
日高豊彦先生(日髙歯科クリニック)
「Prothetic and implant: Key Factors for Long term Success
長期経過から学ぶ補綴・インプラント治療成功の鍵」
インプラントの過去から現在に至るまでの発展のお話し、過去に出版した本の中に掲載した症例に関して、現在の状態を事細かく話されていた。長期にわたる観察とトラブルに対してはリカバリーを行い、患者さんの口の中の歴史を感じた。しっかりした咬合と修復物形態を付与することによって長期的な予後が得られることを長期症例から示されていた。また歯周補綴から始まり、インプラント周囲炎、クラウン、ベニア、頭蓋顔面の成長と多岐にわたる様々な症例を提示し、聴講者にとって大変勉強になった講演であった。

【一般講演】
中村茂人 先生(デンタルクリニックアレーズ銀座)
「包括的治療を学んで -見えてきたことto悩んでいること-」
包括的治療を行うためには診査診断により顎位、咬合、歯周組織や歯の形を含めた審美性など全てを考慮していくことが重要と述べられた上で、患者は誰一人として同じ口腔内ではなく、経年的な顎顔面系の変化に対しても柔軟に対応していかなければならないとした。他院での骨切手術のリカバリーなど、複雑な症例の長期経過を提示しながら予期せぬ変化に対して過去の資料を振り返り分析し、新たな知見を開くという臨床家としてのあり方、資料採得の重要性を再確認さられた。臼歯部の咬合支持の喪失が下顎位に与える変化など、日々の臨床で疑問に思われていることを会場に投げかけ、全体で盛り上がる講演であった。

【教育講演】
土屋賢司 先生(土屋歯科クリニック&ワークス)
「包括的治療における長期経過への一考察」
包括的治療は長期にわたり複雑な治療が必要となるイメージを持つが、シンプルに考え「力」と「動き」を骨格に調和するようにして治療していくことが重要と述べられた。セファロなどを用いた頭蓋顔面からの診査により咬筋の力が垂直にかかるように咬合高径や咬合平面、咬合湾曲を設定するなど、臨床上でのポイントを話された。インプラント、天然歯が混在する口腔内を長期的に管理していくことは非常に難しく、天然歯対天然歯、天然歯対インプラント、インプラント対インプラントでは歯根膜の非圧変位の有無によりそれぞれ咬合に対する考え方を変えねばならないと30年を超える長期経過の貴重な症例を提示された。
そしてCraniofacial GrowthやCraniofacial Change、エイジングも考慮することが重要であり、30歳を超えた患者がインプラント以外の歯の位置が変化していった症例などを提示して予期せぬ変化に対してもFollow upできるように治療計画、インプラントポジションを考えるべきだと述べられた。

講演が終了したのちに、アワードの発表があった。
SJCD Award 2024 : 町田真吾 (荻窪ツイン歯科・矯正歯科)
Hirabayashi Award 2024 : 遠藤元気 (遠藤歯科医院)

閉会の辞においては、松尾幸一先生より今回の例会の成果と今後の展望について言及がなされ、盛会のうちに終了となった。


また本会終了後には懇親会が開催された。会場には120名を超える参加者が集い、和やかな雰囲気の中で活発な意見交換が行われた。懇親会では豪華景品が当たる抽選会の催しが企画され、会場は大いに盛り上がった。懇親会では、参加者同士の交流が深まり、学術的な議論から臨床経験の共有まで、幅広い話題について話すことで、例会の内容を補完する有意義な場として機能し、極めて盛大な会となった。
賛助会員(23社)
クラレノリタケデンタル株式会社
株式会社モリタ
デンツプライシロナ株式会社
株式会社フォレストワン
相田化学工業株式会社
ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社
ソルベンタム合同会社
株式会社メディカルネット
ストローマン・ジャパン株式会社
株式会社GENOVA
株式会社モモセ歯科商会
カボプランメカジャパン株式会社
Ivoclar Vivadent株式会社
科研製薬株式会社
ケンテック株式会社
株式会社 松風
株式会社ガイドデント
アサヒプリテック株式会社
株式会社ネクステラ
株式会社World-Clean Air
株式会社ジーシー
ガイストリッヒファーマジャパン株式会社
株式会社ヨシダ
平素より賛助のご協力ありがとうございます。


文責:滝沢卓也、望月力、杉山達也、町田慎吾、高島浩二



